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「善意は善行を保証しない」
2023年09月06日(水)卓話実施日:2023年09月06日(水)
卓話タイトル:「善意は善行を保証しない」
卓話者:佐藤 寛 様
所属:開発社会学舎主催|元JETROアジア経済研究所 研究員
【無邪気なチャリティーは、支援される人の人生を狂わすことがある】
本日は、元JETRO アジア経済研究所 研究員の佐藤寛様に
『”援助する側”と”援助される側”の意識の違い』
というテーマで卓話をいただきました。佐藤様は、世界から飢えと戦争を無くしたいという想いでJETROに入り、
アジア・アフリカ・中近東などでの途上国支援で活躍されてきました。そうしたご経験から、
ー異文化においては、純粋な善意である支援が、その支援の思惑通りにはならない
という事例を数多くみられ、そうした研究をされてきたそうです。今回はそうした事例を数多くご紹介頂きました。
・事例
スラムで昼間、学校に行っていない子供たちに「かわいそう」だとノートと鉛筆をあげる
・結果
文房具を売って、お菓子や麻薬を買うかもしれない・考察
子供たちがどのようなフィードバックをするかの想像力が不足していた?・事例
日本の技術で現地の洪水問題を解決しようと砂防ダムや護岸工事を行う・結果
現地にダムや護岸をメンテナンスする技術や予算がなく、放置されてしまう・考察
設備などはメンテナンス・修理が必須で、
それが出来るかどうかまで考えなければいけなかった?・事例
NGOが途上国の貧困女性を助けようと、識字教育と手工芸支援(就業支援)を行う・結果
学びたい・仕事が欲しいという男性たちのジェラシーからNGOの宿舎が襲撃されて
大けがをする・考察
より恵まれていない人からという支援は、現地の文化からすると
「秩序を破壊する」暴力的な支援になる?といった事例をお教え頂き色々と考えさせられました。
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先の事例のように、善意である支援が、現地では
”意図しない結果”
を生んでしまい、下手をすると
”支援する側・される側の不幸を生んでしまう”
ことは残念ながら多いようです。では、どう考えればいいのか、そのヒントは今回の卓話の中で、
佐藤様からあった「協力」と「援助」の違いにあるように思いました。車いすを押す行為に例えられていたのですが、車いすを押す際に、
ーその方が行きたい方向を聞いて、車いすを押してあげるのは「協力」
ー押す側が、勝手に行く方向まで決めて、車いすを押してあげるのは「援助」
とされていました。ポイントは、支援される側の
「当事者の方の意見に耳を傾け、その人(たち)の協力をする」
ということで、また支援される側の個人・組織の歴史・文化を深く理解することが大事なのだと教えて頂きました。—
世田谷ロータリークラブの特徴として、
積極的に途上国への支援を行っていることがあります。そのため、今回の卓話から改めて「支援する」ということの難しさを考えさせられました。
では、「ややこしいから支援なんかやめちゃおう」と思うのは簡単で、
逆に、だからこそ
”現地の実情にあわせた良い支援”
には価値があるのだと思います。今回学んだ支援の失敗例から積極的に学び、
現地の方から長期的に喜ばれる支援を目指していきたいです。佐藤様、今回は貴重なお話をお伺いさせていただきありがとうございました。
例会終了後、佐藤様から
・現地ニーズを汲み取って協力することが大事。
・ロータリーは現地にカウンターパート(ロータリアン)がいるからそれがしやすい状況にあると思う。
・ただし、エリートではなく現地の一般の方のニーズを直接汲み取ること。というお話を頂きました。